「悪いと思ってんなら、サービスしていけよ。おかげでこっちは残業になったんだ。そうだな、フェラチオでもしてもらおうか」
………っ!
そのセリフに、長嶋は下げた頭を上げることができなかった。そんなことに応える心の準備は何もできていない。何がサービスだ。
仕事上、ドクターのストレス解消に付き合うことはあるが、男の長嶋は直接身体の相手まではしない。権限のあるそれなりの立場の人間から色事をほのめかされると、勘定は会社持ちで女性のいる店を紹介するくらいがせいぜいだった。
「……できません」
「初めてってわけでもねえだろうが。何が問題なんだ?」
この男は変わっていない。冷たい言いように、心の隅で落胆する。
よくも、そんなことが言える。
もちろん、男の相手をしたことはある―――過去に一人だけ、目の前の相手だ。
けれど今になって、昔のことを持ち出されて貶められる謂れはない。そう言いたいのに、すぐに反論できなかった。
ようやく、口を開く。
「そんなことは、できません」
口から出る言葉は馬鹿のひとつ覚えみたいに、できないの一点張りだ。
東郷の手が長嶋の細い顎にかかり、ゆっくりと持ち上げた。
「やれ」