店を出るまではなんとか歩けたが、階段を上がり終えると急にふらついて酔いが回って足にきた。大須賀に支えてもらわなければ、ひとりで立ってもいられないほどだ。
「鳴海さん、大丈夫か? 気分は?」
頬をくすぐる男の声が心地よい。意識はあったが夢うつつだ。とにかく眠かった。
「う…ん、悪くはないよ。眠いだけ。――ここで、寝る……」
「こらトモ、そんな可愛いこと言ってもだめ。寝るのは家に着いてから、ベッドでね」
ついさっきまで軟体動物のようにくねくねして正体を失っていた有村は、人が変わったように正気に戻っていた。くわえ煙草で髪の毛をかき上げながら、大須賀の肩に寄りかかっている友仁を刺々しい目つきで見つめている。男の我欲むき出しだ。
「さてと。じゃあ大須賀くん、トモを返してもらおうか。僕がタクシーで連れて帰るよ」
愛想のかけらもない口調で、早くよこせと言わんばかりに突き出した指先を曲げる。真正面から視線をぶつけた大須賀は、なるほどなぁ、と薄い笑みを口角に張りつけた。
「最初からテイクアウトのつもりか。きれいな顔に似合わず、ずいぶんといい性格してるね」
「それはどうも。初めてあったときから、もう読まれてると思ったけど」
大須賀に腰を掴まれ抱き寄せられていた友仁は、立ったまま意識を失いかけていた。男たちの声は安らかな眠りを誘う子守歌のようで、会話の意味まではわからない。
「まあ、今さら驚きはしないよ。どうして俺も一緒に呼んだんだ?」
「そりゃあ、そのほうが都合がいいからだよ。きみの前でいい格好しようとして、トモは潰れてくれたし、きみに見せつけることもできたしね」
「だったら話が早い。鳴海さんは俺が連れて帰る。あんたには預けられないな」
「大須賀くんが送りオオカミにならない保証はないだろ。むしろそっちのほうが危ないんじゃない?」
